人は毎日、信じられないほどの「経験」をしている。
通勤電車で隣に座った人の読んでいた本のタイトル。会議でふと浮かんだアイデア。
昼食のラーメンが少し塩辛かったこと。夜、布団の中で思い出した二十年前に言えなかった言葉。
これらはすべて「経験」だ。
しかし、そのほとんどは遠のいていく。
私たちがxAPIという規格に賭けた理由の一つは、まさにここにある。
従来の学習管理システムは「テストを受けた」「動画を見た」という事実しか記録できなかった。
だが人が本当に育つのは、そういう記録に残らない「経験の総体」によってではないか。
営業担当が商談で感じた空気感。現場のベテランが瞬時に下す判断の理由。
新入社員が初めてお客様から「ありがとう」と言われた瞬間の喜び。
それらを何とか可視化できないか。記録できないか。活かせないか。
テクノロジーへの欲望の根っこには、いつもこの「もったいない」という感情がある。
出版社に勤めていた若い頃、私は著者たちの言葉を編む仕事をした。
その経験が映像制作へ、そしてeラーニングへとつながった。
ジャンルは変わっても、問いは変わっていない。
「人の中にあるものを、どうすれば外に取り出して、誰かの役に立てられるか。」
経験は財産だ。ただし、引き出しに眠らせたままでは、財産にならない。
今日あなたが感じたこと、学んだこと、気づいたこと。
それは今夜の夢とともに、半分は消えていく。
だから、書いておこう。誰かに話しておこう。
形にしておこう。残ったものが、あなたを作る。
